5月の詩『よかったなあ』まど・みちお


よかったなあ 草や木が

ぼくらの まわりに いてくれて

目のさめる みどりの葉っぱ

美しいものの代表 花

かぐわしい 実


よかったなあ 草や木が

何おく 何ちょう

もっと 数かぎりなく いてくれて

どの ひとつひとつも

みんな めいめいに 違っていてくれて


よかったなあ 草や木が

どんなところにも いてくれて

鳥や けものや 虫や 人

何が 訪ねるのをでも

そこで 動かないで 待っていてくれて


ああ よかったなあ 草や木がいつも

雨に洗われ

風にみがかれ

太陽にかがやいて きらきらと


『いいけしき』理論社