≪十二月の詩≫ 『ケヤキ』 まど・みちお
ケヤキ
冬がれの いなかに行くと
いつも地平線に
ケヤキが 立っている
私に むかって
高々と 手を あげて
あれこそ 地球の手だ
あれに 迎えられるたびに
私は なつかしさに ふるえる
帰れるはずも なかった
とおい 星から
ぐうぜんに この地球に
帰りついたばかりの人のように
なんびゃく年ぶりに
母のむねに
だきかかえられた人のように
『ことり』
まど・みちお/詩
南塚直子/絵
小峰書房
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