おはなしの森のあたらしい一年がはじまりました。一月の詩「餅について」長田弘(『食卓一期一会』晶文社より)


餅について


冬はおもいきって 寒いのがいい

風はおもいきって 冷たいのがいい

頬は赤く 息は真っ白な冬がいい

子どものころ 田舎の冬がそうだった

空気がするどく澄んでいて

終日 ぼくは石蹴り遊びに熱中し

搗きたて餅が大の好物だった

じんだ餅 たかど餅 つゆ餅

のり餅 くるみ餅 なっと餅

あんころ餅 ねぎ餅 からみ餅

餅は食べかたである

つくりかたで さまざまに名が変わる

つくるとは 名づけること

おふくろが 一つ一つ教えてくれた

鉄は熱いうち 餅は搗きたて

冬のおふくろの言葉を

まだ覚えている



『食卓一期一会』
著/長田弘
晶文社
定価(2,300円+税)



新しい年のはじまりです。


今年もどうぞよろしくお願いします。