今月の詩『木の影』岸田衿子

秋の地図は 透明だから
まだ行ったことのない村の
一ぽんの木や
小学校の庭まで 見えてくる

子どもたちの 小さい影は
かげだしたり うずくまったり
うたうたいながら
ちらばって行くだろう

その木は ずっとたったままで
影をひろげて行くのだろう
ゆうべ木の中で 新しい年輪が一つ
ふえたのが わたしには見える


『いそがなくてもいいんだよ』
岸田衿子詩
童話屋