3月の詩『わたしは まだ』三島慶子
わたしは タネ
くらい土のなかで
ちいさく かたく ひとりぼっち
きょう ながめても
きのうと ちっともかわらない つくづくの タネ
けれど そだっていけば
いつかは 花を さかすかもしれない
春にさく たんぽぽかしら
夏にさく ひまわり
秋にさく のじぎく
冬にさく さざんかなのかもしれない
おおきな花はつけないけれど
一年じゅうみどりの まつ
じっと土のなかでねむり
だれかを まんぷくにさせる じゃがいもかもしれない
ともだちとならんで
冬にぎんいろの風になる すすきもいいな
わたしはまだ タネ
あたたかな土にまもられ
雨のしずくをすい
ゆっくりとじぶんをそだてている
あしたのための わくわくの タネ
『一編の詩があなたを強く
抱きしめる時がある』
水内喜久雄編
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