八月の詩 『太陽と地球』まど・みちお



太陽と地球


まど・みちお


まだ 若かったころのこと

太陽は 気がつきました

わが子 地球について

知ることのできないことが あるのを…



それは 地球の夜です

地球の夜に

どうか安らかな眠りがありますように

どうか幸せな夢があふれますように

祈りをこめて 太陽は

地球の そばに

月を つかわしました

地球の夜を 見まもるために

美しくやさしい 光をあたえて



今では もう

若いとは いえませんが

太陽は 忘れたことがありません

地球の 寝顔が

どんなに 安らかであるかを

夜どおし 月に きくことを…


『まど・みちお詩集
せんねん まんねん』
童話屋