12月の詩『足おと』岸田衿子


足おと


岸田衿子


なぜ たちどまったのですか

あの森のいりぐちで



ポストの裏側から

垣根のあいだから

線路の向こうの空き地から

道はつづいているのに

なぜ まっすぐ歩いて

行かなかったのですか

もうひとつの足おとが

森の中をふんでいくのを

ききながら



なぜおもいだしたのですか

裏木戸をしめてこなかったこと

一枚の葉書を出しわすれたこと

ひき出しの奥の編み針や

編みかけの毛糸を


『いそがなくてもいいんだよ』
詩/岸田衿子
童話屋