≪七月の詩≫岸田衿子「南の絵本」
南の絵本
岸田衿子
いそがなくたっていいんだよ
オリイブ畑の 一ぽん一ぽんの
オリイブの木が そう云っている
汽車に乗りおくれたら
ジプシィの横穴に 眠ってもいい
兎にも馬にもなれなかったので
ろばは村に残って 荷物をはこんでいる
ゆっくり歩いて行けば
明日には間に合わなくても
来世の村に辿りつくだろう
葉書きを出し忘れたら
歩いて届けてもいい
走っても 走っても オリイブ畑は
つきないのだから
いそがなくてもいいんだよ
種をまく人のあるく速度で
あるいていけばいい
『ポケット刺繍』
童話屋
夏を前に緑が輝く森の庭です。
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