わたしのなまえは、サディ。


赤や、青や、むらさきや、たくさんの花が咲いている草むらに、一人の女の子が立っています。赤いブラウスに、緑のスカート。肩にとどくほどの切り髪はまっすぐで、真っ黒。おかっぱ、と呼ばれる髪型に近いかもしれません。女の子はじーっと、本のこちらがわにいるわたしたちを見つめています。黒い瞳を見返しているうちに、あることに気づきます。女の子は、きつねのお面をかぶっているのです。


女の子の名前は、サディ。ゆたかな想像力のつばさを持つ女の子です。ページをめくれば、わたしたちは、サディの感じている世界を、かいま見ることができます。いや、サディにとっては、生きている世界と、想像する世界の間に、明確な壁は、ないのかもしれません。そこにかかる橋を、自由に行き来しているのでしょう。


こどもであれば、それらの世界を思う存分たのしむこと、おとなであれば、その橋のありかを忘れないようにすることが、生きるということなのかもしれません。もしかしたら、表紙に描かれている草むらは、サディのこころの庭なのかもしれないと、森の裏庭で咲いているキツネノテブクロや、レースフラワーを見つめる朝です。


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『サディがいるよ

サラ・オレアリー/文

ジュリー・モースタッド/絵

横山和江/訳

福音館書店

定価(1400円+税)