【庭曜日の虫めがね】シャクヤク


シャクヤクの球根を植えたのは、東日本大震災が起きた後でした。手にした球根の販売元が、たまたま福島だったこと、庭にはじめて植えるシャクヤクだったこと、重ね合わせて、よくよく育ちますようにと、祈るような気持ちで庭の土に植えたことを覚えています。


春の終わりごろに、ころんとした丸いつぼみがあらわれ、はじけることなく膨らんでいき、五月の声を聞くと、花がほころびます。こんな、大きな花がいったいどうやって、丸いつぼみに折りたたまれているのか。自然の不思議をつよく感じる花です。顔を近づけると、ふぅっと甘いにおいがしますが、遠くでは香りません。


子どもの顔ほどもある大きな花に触れる喜びは、花束に顔をうずめるのとはまた違うものがあります。そう、自然界の巨大な動物たちに触れあうような、心の奥底を震えさせる力があるようです。