≪二月の詩≫ 二月のあかり 石垣りん『レモンとねずみ』


二月のあかり



二月には

土の中にあかりがともる


遠足の朝など

夜明けの

まだ暗い空の下で

先に起きだしたお母さんが

台所のデンキをつけるように

旅のしたくを始めるように


二月には ぽっかり

土の窓にあかるいものがともる

もうじき訪れる春を待って


草の芽や

球根たちが出発する

その用意をしてあげるために

土の中でも

お母さんが目をさましている


『レモンとねずみ』
石垣りん/童話屋