コウノトリの軌跡 (ディネセン『アフリカの日々』より)


森の読書猫、ちびのモリーは

朝のお散歩で枇杷をみつけました。




家に帰って、森太郎兄さんに伝えます。

――裏庭の枇杷も、あれくらい大きくなる?

森の裏庭には、

枇杷の小さな苗がたくさんあるのです。

――時間がたったらね。

森太郎はこたえました。



日曜日の森太郎は、

静かなお店の中で本を読んでいます。


――何を読んでるの?

ちびのモリーはたずねました。

――デンマークの女の人が、アフリカで過ごした日々を書いた本だよ。

森太郎はこたえました。






デンマークの裕福な家庭に育った

イサク・ディネセンは、

結婚後にアフリカへ渡ります。



空は淡い青からすみれ色よりも濃くなることはほとんどなく、

そこには巨大な、重力のない、絶えずかたちを変える雲が

ゆたかにそびえたち、ただよっていた。

だがこの空は青い力を内に秘めていて、

近くの丘や森を鮮やかな濃い青に染めあげて見せる。

日ざかり、大気は炎と燃え立ち、いきいきと大地をおおう。

そして流れる水のようにきらめき、波うち、輝いて、

あらゆるものを写しだし、二重の像をつくり、大きな蜃気楼を産み出す。

(中略)

この高地で朝目がさめてまず心にうかぶこと、それは、

この地こそ自分の居るべき場所なのだというよろこびである。

(『アフリカの日々』河出書房新社より)



アフリカの自然、そこに流れる時間、

土地の人々との交流が豊かに書かれています。







森太郎はモリーに、

『アフリカの日々』のおはなしを一つ

教えてくれました。



このおはなしは、

かんたんな絵と一緒に

たのしむおはなしです。



森太郎は紙と鉛筆を用意して、

モリーに話しはじめました。



――小さなまるい家があって、小さなまるい窓があって、

   小さな三角の庭のある家に、男の人が住んでいたんだって。






――家の近くには魚のたくさんいる池が、あったんだって。

   ある晩、ものすごくやかましい音がして、男の人は飛び起きた。

   それで、まっくらやみの道を、池に向かって歩いて行ったんだって。






――池は南の方角にあったんだって。

   そしたらね、道の真ん中で大きな石につまずいた。

   もう少し行ったら、こんどは溝におっこちて、

   這いあがったら、また落っこて、また這いあがって……

   なんと、三つも溝に落っこちたんだ。

   どうやら、道を間違えたらしい。

   男の人は、あわてて北に向かって駆け戻った。






――でも、やっぱり音は南から聞こえてくる。

   男の人はまた、南に向かって歩き出した。

   やっぱり道の真ん中で、大きな石につまづき、

   三つの溝に落っこちた。

   でも、ようやく池にたどりついたんだって。





――どうやら、池の水止めに大きな穴があいている。

   男の人を驚かせた音は、この穴から水が流れ出す音だったんだ。

   男の人は穴を直して、やっとこ家に帰ったんだって。






紙の上には、

男の人の歩いた道筋が描かれています。



それを見たモリーは、

あっと声をあげました。



――鳥だ!






そう、この男の人は、

コウノトリを描く道を歩いているのです。



石にぶつかり、溝に落っこちて、

勘違いをおこして引きかえして、

やっぱり正しかったと行き直して。

ようよう目的地にたどりつきました。



男の人は見事に仕事をやりとげましたけれど、

きっとコウノトリの絵には気づいていません。

それは、おはなしの外側にいる

私たちだけがしっていることです。



このおはなしが載っている

文章のタイトルは

“人生の軌跡”。



――見えないことを、たくさんしてるんだよ、僕ら。

森太郎は、モリーに言いました。



『アフリカの日々/やし酒飲み』
世界文学全集8 池澤夏樹個人編集
河出書房新社 定価(2,800円+税)



≪おはなしの森16周年記念≫



5月25日はおはなしの森の誕生日。


5月23日(月)から、本をお買い上げいただいたお客さまに、

ラベンダーのサシェをプレゼントいたします。


ヨーヨーキルトの柄は二種類。


やわらかな白無地と、動物たちが森で遊ぶ緑の柄。







おだやかな気持ちになる、やさしい香りです。


どうぞおたのしみに。


16周年記念プレゼントのサシェ

サシェのタグ作り。



≪講習会のお知らせ≫



ストーリーテリング
講習会(全四回)








絵本も紙芝居も使わずに、昔話などの

おはなしを素語りするストーリーテリング。

おはなしを語る楽しさを知り、

地域の子どもたちにお話を語ってみませんか。


初めての人も大歓迎です。



とき:6月2日・9日・16日・23日
   (いずれも木曜日)

じかん:10時~12時

講師:津おはなしグループ
    マザーグース会員

定員:20人

申し込み:4月25日(月)9時より
      津図書館へ直接お申し込みください。
      窓口/電話(津図書館:059-229-3321)

※お子さま連れの方は、

  5月29日までにお申し込みされますと、

  有料にて託児サービスをご利用になれます。

  (お子さま一人につき300円)

問い合わせ:津図書館(059-229-3321)



≪おはなしの森をたのしむ会≫



●黄色の手ぶくろで
 5羽のひなどりの
 手遊び人形を
 作りましょう


5月24日(火)

10:30~12:30

定員5名

 
講習費700円

 
ことりはとっても、うたがすき。

手ぶくろの指先に、かわいいひな鳥が並びます。

子どもたちとうたいながら、遊んでください。



・お裁縫道具をお持ちください。

・お子さんとご一緒の方はご相談ください。



●バムセ鳥飼さんの
 手芸教室



☆レジンで夏ペンダントを作ろう




6月3日(金)

10:30~12:30

定員6名 定員になりました。

講習費1100円


人気の素材レジン(樹脂)で

涼しげな夏のペンダントを作ります。



☆原毛フェルトで動物のアクセサリーを作ろう




6月24日(金)

10:30~12:30

定員6名 

講習費1000円


原毛フェルトで作る動物のアクセサリーです。

今回は、ネコまたはハリネズミ。

どちらかお選びくださいね。



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おはなしの森を楽しむ会に参加希望の方は、

キットを用意しますので

電話(059-222-5554)または

メール(ohanasi-gurimu@celery.ocn.ne.jp)でご予約ください。


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≪参加者募集のお知らせ≫



おはなしの森では、

絵本や物語の主人公たち

季節を感じる小物など、

月に一回程度の

手づくり会“おはなしの森を楽しむ会”を

企画しています。



今回取り上げるのは、

人気の絵本『ぞうくんのさんぽ』





『ぞうくんのさんぽ』
作・絵/なかのひろたか
福音館書店
定価(900円+税)


最新刊が2016年5月号の

月刊誌『こどものとも年中向き』に登場!


『かめくんのさんぽ』
作・絵/なかのひろたか
福音館書店
389円


新刊を記念して、

手袋でぞうくんとかめくんを作る会を

7月に予定しています。



参加希望の方はご連絡ください。



≪オリジナル・スタンプカードはもうお持ちですか?≫